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所感雑感

所感雑感

高知新聞からのご依頼で書いた記事です。

心に咲く花

古里高知に長い間背を向けていた自分が、先祖が眠る大豊町に家を持つことになるとは、帰巣本能を生まれながらにプログラムされていたとしか思えません。

高知自動車道大豊インターチェンジから20分、まるで桃源郷のような大豊町立川。ここでその家は120年の時を風雪に耐え、昔は郵便局として、今は"音楽の館"として役目を果たしています。

玄関は、わずかに残っていた塗料から色を再現し復元しました。隣村の番所の解体の際に出た大きな梁や柱などの材木を再利用して建てられたようで、一般的な住宅とはどこか一線を画した風情があります。土間には、廃校になった小学校から運んだグランドピアノとアメリカ演奏旅行で使っていたマリンバを置いてみました。これがなかなかいい空間なんです。

家を購入して間もなく、立川番所保存会会長の石川靖朗さんから、国重要文化財「旧立川番所書院」で行われるイベントでマリンバを演奏してほしいと依頼されました。家のすぐ上に重要文化財があることを知らなかった私ですが、たまたまクロアチアの演奏家たちと日本を演奏旅行中だったため、タイミングよくお引き受けすることができました。

旧立川番所書院は1800年ごろに建築されたもので、参勤交代の時に藩主が宿泊した本陣です。そのような歴史的建造物でマリンバの演奏をさせていただけたことは、大きな喜びとなりました。同時に、過疎化と高齢化の深刻な限界集落で、重要文化財を守り生かしていくことの大切さを知る機会にもなりました。

無名であっても精鋭と呼べる人は日本にごまんといます。そのような人々の力をお借りして質の高い企画を立てられないかと考えているうちに、私の心の中に花が咲くように次々と明確なビジョンが膨らみました。

そして年に1、2回のペースで住民や大豊町役場の職員の皆さんと力を合わせ、地域活性化を目指して重要文化財を活用するイベントを行なってきました。反省点を改善しては学ぶことを繰り返し、新しい挑戦も必ず取り入れるようにしてきました。

その成果は確かに実を結ぶようになりました。一昨年、昨年の2年にわたり開催した「打楽器の祭典」。協賛をいただいた高知県芸術祭の評議委員の方々から「歴史的建造物と音楽芸術とのコラボを提案し、文化財の活用に一石を投じた」「過疎の村でこのようなイベントが企画できるとは」と数々の高い評価をいただきました。

こうした成功体験の一つ一つが、住民の皆さんと私の間の絆を強めてくれたように思います。9回目を迎えた今年11月3日のイベントは「華の祭典」と題して、和太鼓と料亭濱長の芸妓の舞で総合芸術を目指しました。濱長の女将さんの心意気で芸妓さんのほかに舞妓さん、三味線方と囃子方の豪華な編成。何と30分以上も華の舞を披露してくださったのです。勇壮な和太鼓の響きと文化財建造物の迫力も合わさって、椅子が足りなくなるほど集まった聴衆の皆さんは、心ゆくまで堪能している様子でした。

その土地を守り生きる人を土の人、地域の外から情報や人を運んでくる人を風の人と呼ぶそうです。今しばらく私は風の人ですが、いつか土の人になり、そして大豊の土に返るでしょう。

その日まで心の花を咲かせ続けていたいと思います。

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